Niveus 【試聴 / mp3】
蒼く暗き森深く、高い塔が聳えたっていました。
朝、夕、夜―――。
そこからはたびたび少女の歌声が聞こえてきました。
人々の心を優しく包み込む旋律、人々の心を奮い立たせる旋律は、
ときに癒しの歌を、ときに戦いの歌を、人々に届けました。
その昔、村の入り口に置き去りにされていた少女は、人とは少し違った容姿が理由で、
”Niveus(ニウェウス)”と名づけられ、生ける神、地上の神として崇められました。
少女は幼きころから塔に住まわされ、ふもとの村の為に、人々の為に、
歌を通して、空に願いを、人々の祈りを捧げる役割を担うこととなりました。
少女はいつものように窓を開け歌を歌います。
晴れ渡る青い空を、陽の光を受けて輝く森の緑を眺め、
近くに流れる小川のせせらぎの音に耳を傾けていたとき
せっせと塔をよじ登ってくる少年と目が合いました。
風によって飛ばされてしまったストールを探しているうちに塔に辿りつき、
内部から聞こえてくる歌声の主を見てみたいと思ったのだと彼は説明します。
現在でいう「留学」を経た、駆け出しの画家だという少年は、塔から出たことのない少女に
絵を通して様々な世界を見せてあげるのでした。
小気味良い小づちの音が鳴り響く―――
拍手と歓声が沸き起こり、1枚の絵画がまた売られていく。
ここは決して表では取引をすることができない、いわくつきの骨董品が集まる、通称”闇のオークション会場”
今宵もまた1枚、大きな絵が持ち込まれて……
あなたを「図像学」の世界へご招待……!!
ある日、村に男が訪ねてきました。
かつて大国に仕え、神の言葉を聴くことができると豪語する男は、塔から聞こえる歌声について村人から話を聴きます。
男は彼女の存在を大層気に掛けました。
やがて村に住まうようになった男は彼女の元を訪ねることに……
それは、死神の最期。
少年は絵を描くように強制されました。
生神を、死神を、事実を描くように、と。
事実を事実のまま描けないのなら……少年は意思をかため、絵筆をとりました。